本記事では、スリッポンの靴は子供の足に良くないと言われる理由を説明します。
子供靴の売場には、スリッポンも並んでいますよね。
しかし「スリッポンは足に良くない」とよく言われています。 子供が履きやすいからと選ぶ方もいるようですが、何でダメなのでしょうか?
そうなんです。本サイトで調査したところ、靴は、
①足に合ったサイズのものを足に合わせて履くこと
②足と靴のかかとを合わせた状態をキープできるように固定させること
この2点が大事なのですが、
留め具のないスリッポンでは、これらができないため足に良くないと言われているというわけなんです。
本文では、スリッポンの何がどのように足に良くないとされているのかをさらに詳しく解説しますね。
- スリッポンとは留め具のない靴の総称
- 「子供靴の選び方」でスリッポンは推奨されていない
- スリッポンは「サイズ調整」と「足の固定」ができない
- 「サイズ調整」と「足の固定」ができない靴は足に良くない
- 【補足】スリッポンを選ばなければ良いというわけではない
- まとめ
スリッポンとは留め具のない靴の総称
はじめにスリッポンの定義を確認しておきます。スリッポンとは、ひもや留め具の無い靴を指します。
靴の専門店「チヨダ」の公式サイトには以下の様に記載されています。
スリッポンとはスリップ・オン(Slip on)の略で、ひもや留め具の無い靴のことを言います。
足をすべり込ませて履くシューズのことで、スニーカーからビジネスシューズ、そしてパンプスまで幅広い種類に存在していますね。
<出典>株式会社チヨダ公式サイト
スリッポンは、ひもや留め具の無い靴であり、足をすべり込ませて履くと書かれていますよね。
子供靴を留め具の種類で大きく分類すると以下の様に分けられます。
「バレエシューズ」や「ローファー」も広義では「スリッポン」に分類されます。また、見た目はヒモ靴の様に見えるけど、ゴムで固定されている子供靴も「スリッポン」に該当します。
このように、靴ひもやマジックテープのような留め具がない子供靴が「スリッポン」に分類されるというわけです。
「子供靴の選び方」でスリッポンは推奨されていない
子供靴の理想の選び方を調べると、必ずと言って良いほど「紐やマジックテープで留められる靴を選ぶ」と記載されています。つまり、スリッポンは推奨されていません。
例えば、靴選びをサポートするシューフィッター養成認定機関の公式サイトでは以下の様に記載されています。
子ども靴選びのチェックポイント
<略>
・紐など調整具がついた靴。
<出典>
靴の正しい選び方 | シューフィッター養成認定機関 FHA 足と靴と健康協議会
子ども靴の選び方/子ども靴選びのチェックポイントより抜粋
シューズメーカーASICSのサイトでは以下の様に記載されています。
子ども靴の選び方
<略>
1.甲の高さが調節できること
足に合わせて甲の高さが調節できる、紐かワンタッチテープのタイプを選びましょう。<略>
靴教育を推進する先生の論文にも以下の様に記載されています。
1つめは,子ども靴選びに必要な条件を知ることである.これは,<中略>③しっかり締めて固定できる留め具がある.
<出典>吉村眞由美:子どものための靴教育・シューエデュケーション.人間生活工学,14(2),pp.19--24,人間生活工学研究センター,2013.
いずれも、ひもやマジックテープなど留め具のついた靴をお勧めしています。
このように、靴を売る人からも、作る人からも、研究する人からも、子供靴にスリッポンは推奨されていません。
スリッポンは「サイズ調整」と「足の固定」ができない
スリッポンが推奨されない理由は、紐や留め具がないことで以下2点ができないためです。
- 甲部分のサイズ調整
- 足と靴の固定
上記2点について詳しく説明します。
1.スリッポンは甲部分のサイズ調整ができない
スリッポンは留め具がないので、甲部分のサイズ調整ができません。
ヒモ靴やマジックテープの靴の場合、甲の形に合わせて留めることで足にフィットさせることができます。
人間の足は,非常に複雑な曲面でできています.また,日内変動や季節変動など常に変化する足.<中略>変化する足に対応するためには,その都度調節のできる紐,面ファスナー,ベルトなどが付いた靴が,足とのフィット感をより高めてくれます
<出典>櫻井一男:正しい靴の選び方.日本フットケア学会雑誌,16(1);28-30,2018.
人間の足は複雑な形で、さらに足が変化するため、紐等で調節できる靴がフィット感を高めてくれると記載されています。
このように、靴紐やマジックテープには靴を足に合わせる「調整具」という大事な役割があります。
スリッポンには伸縮性の素材で甲部分にフィットさせようとする靴もありますが、基本的にはサイズ調整ができないため甲部分にフィットさせることが難しいという訳です。
2.スリッポンは靴の中で足を固定できない
スリッポンは、留め具がないので靴の中で適切な位置に足を固定しておくことができません。
靴は、履くときに靴と足のかかと部をピッタリ合わせ、歩く動作中もその状態が続くことが理想です。その時、指先には適切なゆとりが必要です。
幼児の足の研究をされているお医者さんの論文には以下の様に記載されています。
それらはまず前足部のゆとりと,この状態を効果的にするために足の前方すべりを抑制することである.
<出典>佐藤,鈴木:幼児の足の成長と靴.靴の医学,Vol.5,pp28--32,日本靴医学会,1991.
足が前方に滑っていかないようにしなければならないと書かれています。
もう一つ、お医者さんによる記事を引用します。
歩いてみて、踏み返すときに、かかとが動かないでフィットしているかをチェックします。
<出典>試し履きの手順より抜粋
第17回 失敗しない靴選びのコツ〜合っているかをどうやって見分ける?〜|足の悩み、一挙解決|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト
踏み返すときにかかとが動かないことを、試し履きで確認しましょうと書かれています。
つまり、歩く動作の中で足が前後に動いてしまったり、かかとが靴と離れてしまわないよう、靴のかかとと足のかかとは固定する必要があるのです。
しかし、スリッポンはそもそも留め具がないので靴に足を固定することができません。
また、スリッポンは構造上履き口を広げて履くことができないため、代わりに伸縮性の素材を使う、ゴムを使う、履き口を大きいデザインにするなどの方法がとられています。履くために伸縮するということは、歩くときも伸縮してしまうということ。
このようにスリッポンは、構造上適切な位置で足を靴に固定することが出来ないというわけです。
「サイズ調整」と「足の固定」ができない靴は足に良くない
スリッポンのように「甲部分のサイズ調整」と「足の固定」ができない靴は足に良くないと言われています。
これは、サイズの合わない靴や靴の中で足が動く状態が、足の変形や傷、運動機能の低下などを引き起こし子どもの正しい成長を邪魔してしまいかねないためです。
サイズが大きすぎたり、足が固定されず靴の中で前に滑っていく状態で靴を履いた場合、良くないことが起こります。
以下の引用図をご覧下さい。
<出典>図2 大きすぎる靴を履くことでの不具合
大きすぎる靴を履いていると、足が前滑りして指先が曲がってしまい、バランスを崩しやすいなどの影響が出ると記載されています。
つまり、「足が前に滑る状態」で靴を履いていると足の変形や運動機能の低下などの影響がでてしまうというわけです。
さらに、こちらの引用図をご覧ください。
<出典>試し履きの手順より
第17回 失敗しない靴選びのコツ〜合っているかをどうやって見分ける?〜|足の悩み、一挙解決|時事メディカル|時事通信の医療ニュースサイト
甲部分がゆるい靴は、靴の中でかかとが浮き、足に負荷がかかると記載されています。
かかとがパカパカと動く状態で歩いていると、足に負荷がかかってしまう。だから、歩くときに靴と足のかかと部分がしっかりと固定されていることが重要ということなのです。
このように、「甲部分のサイズ調整」と「足の固定」ができない靴は足の変形を引き起こしたり負荷がかかったり正常な成長を妨げかねないので、足に良い靴を選んであげる必要があるというわけですね。
【補足】スリッポンを選ばなければ良いというわけではない
本記事の主題として、スリッポンが子供の足に良くないと言われる理由を説明しましたが、ここで大事な補足を加えます。
スリッポンが足に悪い理由は、甲部分のサイズ調整ができないこと・足を固定できないことでした。これは、スリッポンではない靴を選んでも、マジックテープや靴紐を締めっぱなしで脱ぎ履きしていれば、同じことが言えます。
靴は足に合ったものを足に合わせて履いて、固定するもの。
履くごとに、かかとを合わせた状態でマジックテープやヒモ靴を足に合わせてしっかり留めてあげる必要があるわけです。
この履き方をしていなければ、甲部分まで覆ったスリッポンもマジックテープタイプもヒモ靴もほぼ同じと言えますよね。
靴の履き方は、選び方と同じくらい大事なので、お子さんにも是非正しい履き方を教えてあげてください。
まとめ
スリッポンが足に良くないと言われる理由を説明しました。
スリッポンは、
- 甲部分のサイズ調整ができないため、足に合わせて履くことができない
- 足と靴の固定 ができないため、靴の中で足が動いてしまう
そして、これらが足の変形や運動機能の低下などを引き起こし、子どもの正常な成長を邪魔しかねないから、足に良くないと言われている。というわけでした。
何がどう良くないかが分かると、靴選びへの意識も変わってきますよね。
お子さんの足に合った靴選びに、この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。